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ビルメンテナンス業界における「アナログ規制の見直し(緩和)」とは?メリットと懸念ポイント

ビルメンテナンス業界における「アナログ規制の見直し(緩和)」とは?メリットと懸念ポイント

2023年6月に成立した「デジタル規制改革推進の一括法」により、デジタル技術に対応していない現行規制への改革が国の基本方針として位置づけられました。

 

※デジタル社会の形成を図るための規制改革を推進するためのデジタル社会形成基本法等の一部を改正する法律(令和5年法律第63号)(デジタル規制改革推進の一括法)

 

建物オーナーさまのなかには、「アナログ規制の見直しとは?」「具体的には何がどう変わる?」とお思いの方もいらっしゃるでしょう。また、アナログ規制が見直されることにより、実際に建物オーナーさまにも影響があるかもしれません。

 

アナログ規制の見直しとは、政府があらゆる分野において、デジタル化による業務の効率化を推進するもので、ビルメンテナンス業界にも影響を及ぼすものです。

 

今回は、アナログ規制の見直しの概要や7つの領域、メリットや懸念ポイントについて解説します。なお、本記事では政府の資料等を引用する際はアナログ規制の「緩和」、そのほかの部分については「見直し」と表記します。

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アナログ規制の見直しとは?

「アナログ規制」とは、アナログ的手法を前提とした社会制度やルールを指します。

「アナログ規制の見直し」は、政府が日本の少子高齢化問題、産業や各種現場における人手不足などの社会問題を解決するために、あらゆる分野において「デジタル化」を図ることで、業務の効率化を推進するものです。

デジタル庁の発表によると、アナログ規制の見直しにより、コスト削減効果は約2.9兆円、市場拡大効果は約9,000億円、結果として日本のGDPは約3.6兆円のプラス※になると推計されています。

2023年5月30日に行なわれた第7回デジタル臨時行政調査会では、デジタル規制の見直しに関する2023年夏以降の取り組みとして、以下の2つの考えに重点を置くとしています。

  • デジタル原則の下で、「アナログ規制の一掃」から「官民デジタル完結」
  • AI・データ等を徹底活用できる社会づくり

※アナログ規制の見直しによる経済効果(中間報告)~株式会社三菱総合研究所へのデジタル庁委託調査による推計~

アナログ規制の見直しが行なわれる7つの領域

アナログ規制の見直しが行なわれる7つの領域

アナログ規制緩和は、以下の7項目のカテゴリごとに規制の見直しが進められます。7項目のおもな現状例と、見直し後の措置内容は以下のとおりです。

現状例 アナログ規制緩和後
目視規制
  • 施設や設備の検査・巡視・点検を現地に赴き目視で実施
  • ドローンや遠隔操作型無人潜水機等の新技術の積極的な活用を促進
実地監査規制
  • 施設や設備、状況等の法令への適合性を、現場の書類・建物等の確認により判定
  • オンライン会議システム等の技術の活用も可能
定期検査・点検規制
  • 施設や設備の定期的な検査の実施、担当者による記録、保存
  • 常時監視機能で検査を代替
常駐・専任規制
  • 管理者が事業所や現場に常駐
  • 管理に支障がない措置を講じる条件のもとで、情報通信機器の利用で遠隔での職務が可能
対面講習規制
  • 国家資格等の講習会や法定研修等を対面で実施
  • オンライン実施によりどこでも受講可能
書面掲示規制
  • 国家資格等、公的な証明書等を対面確認や紙発行で特定の場所に掲示
  • インターネット上で時間・場所を問わずに観覧可能
往訪閲覧縦覧規制
  • 書類確認のために公的機関等へ訪問
  • インターネット上で時間・場所を問わずに観覧可能

出典:デジタル庁 第7回デジタル臨時行政調査会(2023年5月30日) 資料1「アナログ規制の一掃に向けた取組の進捗とデジタル臨調の今後の検討課題

国は工程表に基づき、上記7つの項目に該当する約1万条項のアナログ規制の見直しを令和6年(2024年)6月までに実施するとしています。

アナログ規制の見直しのメリットと懸念ポイント

ここからは、アナログ規制の見直しによるメリットと懸念ポイントについて解説します。

メリット

アナログ規制の見直しによるおもなメリットは、以下のとおりです。

  1. 業務効率化・利便性の向上:データの蓄積やIT技術の活用によりデータを利活用できる、情報共有がしやすくなる
  2. コスト削減:人件費、紙の文書や郵送費用、移動や通勤時間などが削減される
  3. アクセス領域の拡大:アクセスの難しい場所、遠隔地域においてもデジタル技術を活用して業務を行なえる
  4. 人手不足の解消:IT技術やドローンの活用により省人化が進む
  5. 安全性の向上:河川やダム、水道施設などにおける業務の危険性が軽減される

アナログ規制の見直しにより、これまで人の手でしか行えなかった業務をIT技術やドローンなどを活用した業務に切り替えることができるようになります。

これにより、コスト削減や安全性の向上、人手不足の解消などが期待されます。同時に、新しいビジネスモデルやイノベーションの創出も見込まれるでしょう。

懸念ポイント

次に、懸念ポイントを見てみましょう。

  1. デジタル格差の拡大:デジタル技術を使いこなせない場合はメリットを享受できない
  2. 雇用と労働市場の変化:職種によっては雇用が減少する、または新たな技術の習得が必要になる
  3. データ漏洩リスク:個人データや企業データが多くの場所で保管、共有されるようになり、情報漏洩リスクが増加する

例えば、デジタル文化に馴染みのない高齢者などは、規制が見直されても必要な情報にアクセスできない可能性が生じます。

また、職種によっては雇用が減る可能性も考えられます。ただし、業務において新たな技術の習得が必要な場合、分野によっては雇用の拡大が期待できるでしょう。

アナログ規制の見直しでビルメンテナンス業界はどうなる?

アナログ規制の見直しでビルメンテナンス業界はどうなる?

アナログ規制の見直しにより、ビルメンテナンス業界もデータの蓄積や利活用、情報共有の促進が予想されます。

例えば、設備機器の保守・点検作業などにおける品質向上や、計画を立案・実行する際の業務の効率化などが期待できるでしょう。

また、リモートモニタリングや遠隔操作による業務が可能になることで、離れた場所にあるビルのメンテナンスが可能になる、高所や危険な場所での確認作業の安全性が向上する、などのメリットが生まれます。

加えて、業務の省人化により、少子高齢化時代における人材不足の問題への対策につながるでしょう。人件費が圧縮されることで、昨今の高騰する資材やエネルギーコストのカバーも期待できます。

ただし、ビルメンテナンス業界におけるアナログ規制の見直しでは、新たなシステムの構築や、デジタル技術の理解や活用が難しい社員に対する教育、サポートが必要です。

また、デジタルデータの増加にともなう、セキュリティの強化も求められます。これらの問題を克服すれば、ビルメンテナンス業界のさらなる発展に期待できます。

アナログ規制の見直しでイノベーションを促進

アナログ規制の見直しは、政府があらゆる分野において「デジタル化」を推進するものの一環です。この取り組みにより、業務の効率化・コスト削減・アクセス領域の拡大などのメリットが生まれます。

ただし、デジタル格差が拡大することや、データ漏洩リスクなどの懸念点も考慮しなければなりません。

ビルメンテナンス業界においては、データの利活用や遠隔操作による業務が可能となることで、人手不足の解消や危険性の高い業務における安全性の確保などが期待されます。しかし、同時に新たなデジタル技術への対応や、セキュリティの強化が不可欠です。

アナログ規制の見直しによりデジタル技術活用が促進されることで、ビルメンテナンス業界は新たなビジネス形態の拡大や創出を期待できるでしょう。

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