予防保全とは?メリットと課題・実現するためのステップ
ビルの設備を長持ちさせたい、安定稼働させたいとお考えの建物オーナーさまのなかには、「予防保全とは?」「ビルの予防保全を実現するには何が必要?」といった疑問を持つ方もいるでしょう。
予防保全とは、定期的な点検やメンテナンスのもと、設備機器のトラブルが発生する前に行なう保全を指します。ビルの予防保全を行なうには、予防保全計画の立案や、予防保全の仕組化が必要です。
今回は、予防保全の概要や事後保全との違い、メリットや課題、課題の解決法について解説します。加えて、ビルの予防保全を実現するための方法についても紹介します。
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目次
予防保全とは
予防保全とは、設備機器を安定稼働させるために、不具合や故障などのトラブルが発生する前に行なう保全方法を指します。
予防保全は、時間基準保全(TBM:Time-based Maintenance)・利用基準保全(UBM:Usage-based Maintenance)・状態基準保全(CBM:Condition-based Maintenance)の3つに分けられ、どの保全方法も定期的な点検やメンテナンスによって実施します。
時間基準保全(TBM)
時間基準保全は、「時間」を基準とする保全方法です。時間基準保全は、「エアコンフィルターは12ヵ月経過したら交換する」というように、一定の期間が経過した時点で設備機器の部品などをその状態に関わらず、保全スケジュールに従って交換します。
利用基準保全(UBM)
利用基準保全は、設備機器の実際の「使用状況」を基準とする保全です。具体的には、「自動ドアのドアエンジンの作動回数が300万回を越えたら交換する」というように、設備機器の運転回数、メンテナンス・故障・停止状態等の時間を除く実際の作動時間など、使用量に応じた保全を行ないます。
状態基準保全(CBM)
状態基準保全は、設備機器の「状態」を基準とする保全を指し、設備機器の不具合や劣化、異常の前触れが見られる場合に部品などを交換します。
例えば、エレベーターの状態基準保全では、ロープに摩耗・赤錆・素線切れなどを確認した場合、ロープの交換は目視による判断ではなく、数値化された基準に基づいて行なわれます。
なお、予防保全には、時間基準保全・利用基準保全・状態基準保全の3つを複合させて、1つの基準を設けることにより、さまざまな角度から設備のメンテナンスを行なうことがあります。
一例ですが、安全基準が厳格な新幹線であれば、このような複合的な考え方に基づいてより安全サイドになるような数値基準が用いられています。
「事後保全」との違い
事後保全とは、設備機器の不具合や故障が発生したあとに行なう保全のことです。事後保全のメリットは、不具合が発生するまでの期間は保全業務へのリソースがかからないことです。
しかし、事後保全は保全業務が突発的に発生するため、担当者のスケジュールが組みづらい、設備機器のダウンタイムが発生するなどのデメリットがあります。
予防保全4つのメリット
ここからは、予防保全の4つのメリットについて解説します。
設備機器の長寿命化
ビルの設備機器が故障すると、その故障箇所だけでなく、ほかの部分にも何らかの負担がかかります。故障と修理を繰り返せば、次第に設備機器の寿命が短くなってしまいます。
予防保全では、定期的な点検やメンテナンス、または不具合などの前兆を察知した時点で部品を交換するため、余裕をもって保全対応を行うことができ、ほかの部分に負荷をかけるリスクも低減できるため、設備機器の長寿命化が期待できます。
コスト削減
上述のとおり、予防保全は設備機器の定期的な点検やメンテナンス、早期の不具合対応により、設備の寿命を延ばすことができます。これにより、大規模な補修や修理不能による買い替えの必要性が減少し、コスト削減につながります。
運営の安定化
ビルの設備機器に不具合が生じたり、故障が発生したりした場合、その修理が完了し正常な状態に戻るまで設備を稼働させることはできません。
予期せぬ対応ですから、修理や部品の取り寄せに時間がかかることもあり、設備機器のダウンタイムが長期化して安定した運営ができなくなる可能性もあります。
また、予め決まっていた重要なイベントのときに設備が故障し、大きな損害を被ることもあります。
予防保全を行なうことで設備機器が安定稼動し、例えば適切な温度管理、良質な空気環境、照明の最適化などが維持されるため、顧客満足度が向上します。
安全性の確保
設備機器の不具合や故障が原因となり、事故が発生する場合があります。予防保全によって設備機器の安全性を高めることで、事故発生のリスクを減らすことが期待できます。
予防保全3つの課題
次に、予防保全の3つの課題について見ていきましょう。
突発的なトラブルの発生をゼロにはできない
定期的な点検やメンテナンスの前に設備機器の劣化が進行していた場合、突発的なトラブルが発生することがあります。予防保全は設備機器のトラブル発生頻度を抑えられますが、ゼロにはできません。
オーバーメンテナンスでかえってコストが高くなる可能性がある
点検時期と設備機器の劣化のタイミングによっては、まだ十分に使用できる部品を交換してしまう可能性があります。このようなオーバーメンテナンスが生じると、部品交換費用や人件費などのコストが発生します。
データ分析・人材・スケジュール管理が必要
予防保全では、設備機器の定期点検を行ないます。定期点検では、作業負担や無駄なコストの発生を避けるため、設備機器ごとの適切な点検時期の設定や値の分析、点検スケジュール管理を行なわなければなりません。
また、定期点検だけでなく、突発的なトラブルの発生にも対応できる人材の確保も必要です。
予防保全の課題2つの解決法
次に、予防保全の課題を解決するための2つの方法について解説します。
点検・メンテナンススケジュールの最適化
予防保全を行なう際は、メーカーのガイドラインや過去のメンテナンス履歴に基づき、設備ごとの定期的な点検時期や、メンテナンススケジュールを最適化させることが大切です。
また、時間基準・利用基準・状態基準の3つの指標を組み合わせることも解決策になるかもしれません。
適切なタイミングで予防保全を行なうと、設備機器の劣化や損傷を早期に発見できるため、突発的なトラブル発生の未然防止を期待できます。加えて、オーバーメンテナンスの防止、安全リスクの軽減にもつながります。
システム導入によるデータ活用
設備機器ごとに適切な点検時期や値の分析をするには、データを収集するためのシステムやセンサーを用いて、過去の稼働データや点検結果をデータベースにまとめることが必要です。
設備機器の点検スケジュールを管理するには、メンテナンス管理ソフトウェアなどのシステムを導入します。このシステムを活用することで、スケジュールの可視化、保全状況のリアルタイム確認、担当者同士での情報共有が容易になります。
また、緊急事態に対応する担当者の情報や、予備部品や資材の在庫数などもデータ化しておくことが大切です。
ビルの予防保全を実現する2つのステップ
ビルの予防保全では、おもに建築設備(自動ドア・エレベーター・シャッターなど)や、電気設備、消防設備、給排水・衛生設備、空調設備などの設備機器の保全が必要です。最後にビルの予防保全を実現するための2つのステップについて解説します。
Step1.修繕計画の立案
修繕計画の立案では、まず保全対象となる設備機器や部品のリストアップを行ないます。次に、それぞれの設備機器や部品の使用回数や期間を踏まえたうえで、メーカーの推奨する修繕周期・方法やメンテナンス会社・現場担当者の経験や知識などを参考に保全基準を設定します。
予防保全計画は、「保全基準が適切かどうか」を確認するために定期的な見直しが必要です。
Step2.予防保全の仕組化
予防保全の仕組化では、誰が、いつ、どの設備機器の予防保全を行なうのかを決定します。
同時に、保全作業の抜け漏れを回避するために実施手順をマニュアル化し、全員が同じ基準で作業を進められるようにします。さらに、保全記録を残し、進捗管理を行なうためのシステムを用意します。
「ビルの予防保全」のご相談は大阪ガスファシリティーズへ
予防保全とは、ビルの設備機器を安定稼働させるために、トラブルが起こる前に実施する保全方法です。
予防保全には、設備機器の長寿命化、コスト削減、運営の安定化などのメリットがありますが、予期せぬトラブルの発生をゼロにはできないことや、オーバーメンテナンスが発生する可能性、データ分析や人材、スケジュール管理の必要性などの課題もともないます。
これらの課題に対処するためには、点検やメンテナンスのスケジュールを最適化し、データを活用するシステムの導入が不可欠です。
大阪ガスファシリティーズのDM(データ・マネジメント)サービスでは、設備機器の長寿命化を目指すために、設備更新やメンテナンスの履歴を記録し、そのデータに基づく適切な保全計画を提案します。
ビルの保全業務にお悩みの建物オーナーさまは、ぜひ大阪ガスファシリティーズへお問い合わせください。
ビルの予防保全に関する問い合わせは大阪ガスファシリティーズへ