
電気が止まったらビルはどうなる?広範囲での停電のリスクとBCP対策
「街全体、広範囲での停電が発生し、電気の早期復旧が見込めない状況になったとき、どう対処すればよいのか」と不安を抱くオーナーさまもいらっしゃるのではないでしょうか。
停電により照明、エレベーター、空調といった基本機能が停止すれば、安全確保や業務継続が困難になります。
しかも早期復旧は見込めないため、あらかじめ対策を練っておくことが重要です。
また、停電は施設の運営時間にかかわらず、早朝から深夜といった無人の時間帯に発生する可能性があります。
その際、同時に交通網が寸断されると、自力で出勤できる人員が限られる中で対応しなければなりません。
そのため、こうした状況を想定し、事前に具体的な対応手順を策定しておくことが重要です。
広範囲での停電が起きた事例として、平成30年北海道胆振東部地震が挙げられます。この地震によって、道内全域で最大約295万戸が停電し、日本で初めてのブラックアウト(完全停電)が発生しました。
その際には交通機関の全面停止や通信、放送の中断など、電力インフラの停止が発生しました。
企業によっては、自家発電設備による電力の確保に努め、数日後には地震による影響のなかった水力・火力発電所の稼働により、復旧が進みましたが、社会全体に深刻な影響を与えました。
また近年では、南海トラフ地震が今後30年以内に発生する確率は60%~90%程度以上に達すると言われており、万一地震が発生した場合には、広範囲での停電が起こる可能性も十分に考えられます。
そのため、日頃からの備えが非常に重要です。
広範囲での停電というと地震や台風など大規模災害を想定しがちですが、設備の不具合や管理ミス、送電線への落雷など、身近な原因で発生する停電やサイバー攻撃による停電についても想定しておく必要があります。
本記事では、停電が発生した際の3つのリスク、停電による連鎖停止影響、そして今すぐ実践できる対策などについて解説します。
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目次
停電時にビルが直面する3つのリスク

ここでは、停電が発生した際にビルが直面する3つのリスクについて解説します。
主要機能の停止による事業中断リスク
停電が発生すると、次のような機器の使用が停止します。
- 照明
- エレベーター
- 空調設備
- 給水ポンプ
- セキュリティシステム
- ネットワークシステム
- 冷蔵、冷凍庫などの保冷保温機器
- 消火設備
など
これらの機能はいずれもビルの安全性や快適性、業務継続に不可欠であり、どれか1つが停止しても深刻な問題となりますが、それが複数重なることで、ビル全体の運営に大きな支障をもたらします。
電気は、ほかのインフラと比べても代替手段の確保が難しい中核的なインフラです。断水時には井戸水や河川からの採水、水道局による給水など代替手段を確保できる可能性がありますが、電気の場合は発電機以外に現実的な代替方法がありません。
しかも発電機も燃料の調達や容量の制約があるため、長期間にわたる安定供給は困難です。そのため電気が停止すると、ビル運営に必要なあらゆる設備に連鎖的な影響がおよび、ビル経営の根幹を揺るがす重大な問題となります。
空調停止による職場環境悪化・設備損傷の複合リスク
空調設備が停止すると、さまざまな支障が生じます。夏季には室温の上昇により熱中症のリスクが高まり、冬季には低温によって作業効率の低下が避けられません。
さらに、湿度管理ができなくなることで、精密機器や重要書類の保管にも悪影響をおよぼす可能性があります。このように室内環境が悪化すると、テナント企業の業務継続が困難になり、業務停止のリスクが高まります。
高層階への給水停止による業務継続性低下リスク
停電が発生すると、水の利用ができなくなる可能性があります。地下に設置された貯水槽からの送水はすべてポンプに依存しているため、停電や電源トラブルが発生すれば高層階への給水は全面的に停止します。
たとえ地域の水道供給自体が継続していたとしても、バケツなどを使った手動での対応は一時的な緊急措置にとどまります。
トイレに関しては、自動水栓、自動手洗タイプも多く、停電による機能停止リスクや、それに伴う衛生上のリスクも抱えています。
以下は、停電による時系列で見るビルへの影響です。

また、広範囲での停電の影響はビル内にとどまらず、都市インフラ全体におよぶことを想定しておく必要があります。例えば、信号機の停止による交通渋滞や鉄道運行の停止といった交通網への影響、従業員の出勤困難や物資・食料配送の遅延、医療機関への搬送困難、さらには緊急対応要員の不足といった物流や人的リソースへの影響が考えられます。
停電に備えるために今すぐに始められる対策とは

停電に備えるには、日常的な準備と緊急時の手順を整えておくことが重要です。ここでは、今すぐに取り組める基本的な対策について解説します。
非常用電源の整備および手動運用手順の確立
非常用発電機の定期点検や燃料補給は、基本的な対策として欠かせません。月次の試運転による動作確認、燃料タンクの容量チェック、バッテリー交換、冷却水の補充といったメンテナンスが、いざというときの確実な稼働を左右します。
同時に、電力供給が完全に停止した場合の手動運用手順を整備することも必要です。例えば、エレベーターの手動解放方法、給水ポンプの代替操作、防火シャッターの手動開閉、セキュリティゲートのマニュアル解錠など、各設備を電力なしで操作するための手順を明文化し、担当者に対して訓練を行なうことが求められます。
また、見落としがちなのが燃料切れを想定した準備です。広範囲での停電が長期化すれば必ず燃料不足に直面するため、補給体制や代替手段を含めた対策を事前に検討しておく必要があります。
緊急時の人的リソース確保と即応体制の構築
街全体、広範囲での停電が発生すると、通常の管理体制では十分に対応できない場合が多いため、事前に人員配置計画を立てておくことが重要です。
各メンバーの役割分担を明確にしておく必要があります。設備点検担当、テナント対応担当、協力会社との連絡調整担当といった専門性に応じた配置が効果的です。
また、交通機関が麻痺して通常どおり出勤できない状況を想定し、ビル近隣在住者を優先した緊急召集体制や、自力出勤可能な者のみでの対応体制を整備しておくことが求められます。
連絡手段についても、携帯電話が使用できない状況を想定し、代替となる通信手段を確保しておくことが不可欠です。
コージェネレーションシステム導入による自立電源確保
コージェネレーションシステムとは、都市ガスや石油などを利用して電力と熱を同時に生み出す高効率なエネルギーシステムです。
停電が発生した際にも都市ガスで発電を行なうことで、あらかじめ選定した重要な設備へ給電することが可能になります。通常時は商用電力と連系運転を行ない、停電時には自動的に重要設備への給電に切り替わる仕組みです。
また、機種によってはガス供給が途絶えた場合でも、プロパンエアーガスを備蓄しておくことで発電を継続できるものもあり、災害時における電源セキュリティを大幅に高めることができます。
こうした特性を持つことから、BCP対策としてコージェネレーションシステムの導入を検討することが推奨されます。
「ビル停電時のBCP対策」のご相談は大阪ガスファシリティーズへ
街全体、広範囲での停電は単なる電力供給の停止にとどまらず、ビル経営の基盤に関わる深刻なリスクとなります。照明、エレベーター、空調、給水システムが停止すれば、テナントの安全と業務継続に支障をきたします。
これらのリスクに備えるには、非常用電源の整備や手動運用手順の確立、緊急時の人員体制構築、さらに管理委託先との明確な協定締結といった多面的な対策が不可欠です。
大阪ガスファシリティーズでは、非常用発電機の導入・管理からコージェネレーションシステムの活用、そしてファシリティマネジメントまで、トータルなBCP対策を提供しています。BCP対策の策定についてお悩みのビルオーナーさまは、大阪ガスファシリティーズへご相談ください。
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