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学校の省エネを効果的に行うには? 夏・冬の効率的な省エネ方法についてお伝えします

学校の省エネを効果的に行うには? 夏・冬の効率的な省エネ方法についてお伝えします

電力需給のひっ迫と料金値上げにより、教育機関では省エネが急務です。
ですが、「冷房28℃、暖房20℃」や「電気をこまめに消す」といった省エネで本当に効果があるのでしょうか?

この記事では学校施設や教育機関の方に向けて、各季節の効果的な省エネ方法について紹介します。

効果の薄い"我慢の省エネ"

効果の薄い"我慢の省エネ"

よく教育機関で行われる省エネとして、「冷房28℃、暖房20℃」や「電気のこまめな消灯」「節水」といったものが挙げられます。節電のために多少の我慢は仕方ないよね、といった考えで行われる施策ですが、果たして本当に節電ができているのでしょうか?

残念ながら、抜本的なシステムの導入なしに人間が我慢することで行う省エネは、効果の薄い”我慢の省エネ”です。たとえ28℃に空調を設定していても、機器そのものの配置や管理、設定が不十分では莫大なエネルギーを消費しますし、逆に適切な設定がなされた省エネ機器を運用すれば、室温を25℃に下げていても、手動の28℃設定よりはるかに効率的な省エネが行えることもあります。

我慢の省エネの問題点

我慢の省エネの問題点は本末転倒になりがちなことです。本来、省エネの目的は、年間のエネルギー消費量を一定量削減することです。しかし、我慢の省エネを続けているうちに、いつの間にか空調を弱くし、電気や水道を止めること自体が目的になっていきます。

この記事を読んでいる方にも憶えがありませんか? 室内が蒸し暑いのに空調設定を変更できなかったり、電気が消えているかを確認する作業が生まれたり、トイレの水が勢いよく流れないせいで困ったり……。その結果、授業や業務の生産性が下がり、業務時間が延び、結果的に省エネ効率が落ちてしまいます。

では、効率的な”我慢しない省エネ”を行うためには、何をすればいいでしょうか?

まずは現状のエネルギー消費を把握しよう

現状のエネルギー消費量を把握し、目標値を設定することから始めるのが、”我慢の省エネ”を防ぐ第一歩です。確認するのは電気料金だけではありません。なぜなら、電気料金は値上げ・値下げによって変わり、細かなエネルギー消費量を反映しないため、正確なエネルギー消費量を割り出すことが難しいからです。

どの程度エネルギーを消費したのかといった推移を可視化し、月々で確認することで、季節ごとの施設のエネルギー消費量を算出できます。そこから具体的な省エネ目標を作り、人力ではなく機器の運用改善によって省エネを進めていきましょう。

では、エネルギー消費の可視化には何をすればいいのでしょうか。

設備を確認し、台帳を作る

歴史ある学校ほど、管理物件の多棟化や管理担当者の異動などが理由で、図面や設備台帳整備が不十分になり、建物の現状把握が難しくなっていく傾向にあります。まずは過去の管理図面を探し、建物を建築した当時から過去の工事・設備導入による変更まで、時系列的に反映させた台帳を作りましょう。

そのうえで、現在ほとんど利用していないにもかかわらずエネルギーを消費している設備や、全体最適化されていないせいでロスが発生している設備がないか洗い出し、改善することで効果の大きい省エネが見込めます。

図面確認や台帳の製作、改善すべき設備の洗い出しが難しいのであれば、建物設備の管理ができる業者に依頼してみるのも1つの手段です。省エネ設備に強い業者であれば、建物の特性にあわせたコスト削減策と省エネルギー対策を提案してくれるでしょう。

エネルギーマネジメントシステムを導入する

エネルギーマネジメントシステムとは、消費しているエネルギーを可視化し、集中管理できるようにするシステムのことです。

省エネを行う上でまず導入しなければならないのが、このエネルギーマネジメントシステムです。省エネ機器をいくら導入しても、エネルギーマネジメントができていなければ、機器が本来の省エネ性能を発揮できないこともあります。

エネルギーマネジメントシステム導入のメリットは、省エネ機器を最適に運用できること、エネルギーの使用状況や使い過ぎが数値やアラートとなって表れること、設備の不具合などをすぐ確認できるようになること、エネルギー消費量を記録できるようになり、施策の効果を確認しやすくなること、などです。また、施策の効果が目に見えて分かりやすくなることによって、職員や学生の省エネに対するモチベーションを高める効果もあります。

効率的な"我慢しない省エネの方法"

我慢しない省エネの方法は、主に以下のようなものが挙げられます。

照明のLED化とセンサースイッチの導入

照明のLED化とセンサースイッチの導入

学校によっては、グラウンドの夜間利用や学生の安全を守るための施設周辺のライトアップなどで、大規模に夜間照明を使用することがあります。「照明でどこまで節電できるか」は学校施設の省エネを成功させる重要なポイントです。

そこで照明のLED化とセンサースイッチの導入がカギを握ります。LED化によって蛍光灯や白熱電球、水銀灯を使用していた場合に比べておよそ20~30%、最大50%もの省エネも可能なほか、トイレや夜間のライトアップ用の照明などにセンサースイッチを導入すれば、さらなる省エネが見込めるでしょう。

外皮の遮熱化

外気温の影響を受けやすい施設は、温度を一定に保つため空調に大きな負担が掛かってしまいます。施設の外皮を断熱・遮熱化素材に変更すれば、日照状態や外気温の影響を小さくし、屋内の気温を一定に保ちやすくなるため、空調への負担を軽減し、それだけ消費電力を低減できます。断熱・遮熱素材は一般的な素材よりも高コストですが、省エネという視点から見ればコストパフォーマンスに優れた商品です。

設備の一本化・間引き

設備が集中管理できておらず、複数の設備が同時並行で稼働している場合、その機器が高い省エネ性能を持っていたとしても、十分な性能を発揮できないことがあります。管理システムの一本化や並行稼働している設備の間引きなど、機器の適切な集約を行うことで、エネルギーのロスを防ぎ、省エネ化を進めることができます。

ガスコージェネレーションシステムの導入

ガスをお使いの学校の場合、ガスコージェネレーションシステムを導入することも省エネには効果的です。ガスコージェネレーションシステムは都市ガスを利用して発電を行うとともに、同時に発生する熱を冷房・暖房・給湯などに利用できます。従来の大規模な発電システムと比較して、廃熱や送電によるエネルギーの無駄を省くことでおよそ2倍の効率で発電が行えます。また、空調システムと組み合わせることで電力負荷を抑え、買電量を削減できるため電気料金を低減できるほか、CO2を3割程度削減することも可能です。

なお、停電対応型ガスコージェネレーションシステムなら電力会社からの送電が途切れた際でも電力供給の継続ができるといった利点があり、災害時のBCP対策としても有効です。

夏場に向けた省エネの方法

夏場に向けた省エネの方法

猛暑・酷暑が増えた現在、夏場のエネルギー消費は比例して大きくなっています。電気事業連合会が制作したデータベース「INFOBASE 2021」によれば、2020年度の時点で例年もっとも電力消費の少ない5月の消費電力が1億300万kwなのに対し、8月は1億6600万kwもの電力を消費していることが分かっています。これは、5月に比較して8月の消費電力は1.5倍に跳ね上がるということです。

この消費電力増加の理由は空調設備です。猛暑になればなるほど、室内の気温を保つために空調設備に大きな負担がかかり、それだけエネルギーを消費します。そのため、よく夏場の節電施策として「空調の28℃設定」が掲げられるのです。

しかし、以前は冷房設備を稼働させずに乗り切ることができた6月や9月ごろでも熱中症対策が必要なのが今の時代です。冷房を28℃に設定するだけの我慢の省エネは、効率の点でも健康の点でも不適切といえるでしょう。

それでは、どのように夏場は効率よく省エネを進めればいいのでしょうか?

空調の集中管理

エネルギーマネジメントを行い、空調を集中管理することで、部屋やフロア単位で部分最適化されていた空調を全体最適化できます。例えば、これまで部屋単位で行っていた室温のコントロールが、建物全体で操作できるようになります。これにより、人の多い部屋では空調を強くしたり、人のいない部屋や日陰になっている部屋、雨天では空調のパワーを落としたりする、といった調整が行えます。

窓の遮熱化

学校施設は照度の確保や開放感の演出のため、窓を多く・大きくとっていることが多いもの。しかし、窓から伝わる外気温や窓から差し込む夏の太陽光は室温を上げる原因になります。

そこで、窓を遮熱化することをお勧めします。「遮熱化? 断熱化とは違うの?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。遮熱とは長波放射(気温に影響する、可視光線を含む電磁波のこと)を防ぐこと、断熱とは内部の熱が外に逃げないようにすることを指します。

不透明な素材であれば光を通すことはないですが、ガラスなどの透明な素材では、断熱性能が高くても光が通ってしまうため、室内の気温が上がってしまいます。遮熱フィルムを貼付する等の遮熱化工事で、明るさを損なわずに空調の負担を低減しつつ気温を低く抑えられるでしょう。

冬場に向けた省エネの方法

冬場に向けた省エネの方法

電力消費が跳ね上がるのは夏場だけではありません。冬場も同等程度に電力消費が上がります。「INFOBASE 2021」によれば、2020年度の時点で1月は1億5600万kwもの電力を消費していることが分かっています。つまり、冬場であっても夏期と同じくらい消費しているということです。

この消費電力増加の理由は、やはり空調設備です。夏同様、室内の気温を保つためには空調設備に大きな負担がかかり、それだけエネルギーを消費します。だからこそ、冬場の「暖房20℃設定」が掲げられます。

さらに、冬場は定期的に換気を行うことが夏場よりも重要になります。空気が乾燥し、免疫力も弱りがちな冬場は、インフルエンザを始めとした感染症が蔓延しやすいもの。しかし、こまめに窓を開けて換気すると、快適な室温を保つことが難しくなってしまい、空調の負担も大きくなります。

それでは、どのように冬場は効率よく省エネを進めればいいのでしょうか?

窓の断熱化

前述したように、断熱化とは内部の熱が外に出ないようにするものです。窓は外気温を伝えやすい部分のため、断熱化を行えば、高い効果が上がります。この際に気を付けるべき点は、遮熱化と断熱化の関係です。断熱化をするだけでは室内の熱が外に出ていきづらくなり、冬場は暖かいものの、夏場は暑くなりやすくなってしまいます。逆に、遮熱化を行った場合、夏場は涼しいものの、室内が日光で温められづらくなるため、それだけ冬場は寒くなります。日照方向や開口部、換気システムなどを勘案しなければ、遮熱化・断熱化は十分な効果を発揮しません。そのためにも、断熱化や遮熱化と共にエネルギーマネジメントを行いましょう。

全熱交換器の見直し・導入

全熱交換器とは換気のための装置です。通常の換気扇との違いは、換気を行っても屋内の熱や湿度を逃がさないことで、換気により冬場の感染症対策を行いながら屋内の環境を快適に保てます。また、屋内の温度や湿度を逃がさず、熱エネルギーを再利用できるため、暖房器具への負担を小さくし、効果的に省エネを行えます。

このように便利な全熱交換器ですが、十分な省エネ性能を発揮するためには空気の流れを考えた設置、エネルギーマネジメントシステムによる空調システムと並行した動作管理、定期的なメンテナンスなどが必要です。現状既に全熱交換器を設置している場合でも、思ったより省エネ性能を発揮できていないと感じられる場合は、一度専門家による設備確認を受けてみるのもよいでしょう。

予算確保が大変・スケジュールに不安がある時には?

けれども、予算の確保や省エネ化の優先順位、修繕計画に不安がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな時にはやはり、施設管理業者を頼り、協力して長期修繕計画を作っていくことから始めるのがいいでしょう。

ただし、教育施設はオフィスビルやマンションなどとは機器管理のポイントが違うため、業者によってはノウハウがない場合があります。教育施設の管理実績が多い企業であれば、適切な管理を行えるでしょう。

単純に空調の効きを抑えるような我慢の省エネよりも、適切なエネルギーマネジメントと機器の更新による省エネの方が効果が高く、快適な場所を作れます。「省エネのためなら我慢は仕方がない……」と諦める前に、まずは今、適切な省エネのための建物管理と運用ができているのかを再確認することが重要です。

学校の省エネ改修工事は大阪ガスファシリティーズへ

大阪ガスファシリティーズは関西圏の大学キャンパスを中心に、多数の教育施設の管理実績があります。Daigasグループと連携したエネルギーマネジメントにより、省エネ設備に強く、教育施設の長期修繕計画や強靭化施策をサポートいたします。

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