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オフィスビルに省エネ対策はなぜ必要?9つの対策方法

オフィスビルに省エネ対策はなぜ必要?9つの対策方法

昨今、世界的なエネルギー価格の高騰や地球温暖化により、家庭や企業において省エネの取り組みが加速しています。オフィスビルもその例外ではありません。

 

一方で、オフィスビルのオーナーさまのなかには、「具体的な省エネ対策とはなにがあるのか」という疑問をお持ちの方もいるでしょう。

 

オフィスビルの省エネ対策では、「どこにどのくらいのエネルギーが使われているのか」を可視化し、省エネが必要な部分に対策を講じることが大切です。

 

この記事では、オフィスビルに省エネ対策が必要な背景やエネルギー消費の割合、3つのメリット、9つの対策方法を解説します。

オフィスビルの省エネ対策なら大阪ガスファシリティーズ

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省エネ対策が求められる背景

省エネ対策が求められる背景

まずは、省エネ対策が求められる背景を解説します。

2030年の省エネ目標・2050年カーボンニュートラルの実現

2015年に開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定では、以下のような世界共通の長期目標が掲げられました。

・世界的な平均気温の上昇を工業化以前に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求すること
・今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と吸収源による除去量との間の均衡を達成すること

出典:環境省ホームページ
https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/about/

 

このような世界的な動きを踏まえ、日本においても気候変動問題に対する以下のような取り組みが政府主導で進められています。

 

・2030年の省エネ目標
日本では、温室効果ガスを「(2013年度比で)2030年度の46%削減、更に50%の高みを目指して挑戦を続ける」として、温室効果ガス削減に向けて施策を講じる方針が提示されています。例えば第6次エネルギー基本計画においては、法制度の改正や技術開発・導入支援が政策対応のポイントとして掲げられています。
なお、これら対応の結果として、「徹底した省エネルギーや非化石エネルギーの拡大を進める上での需給両面における様々な課題の克服を野心的に想定した場合」には、

・エネルギーの安定供給:エネルギー自給率30%程度
・環境への適合:エネルギー起源CO2の削減割合を2013年度比で45%程度

となるという見通しを立てています。

出典:資源エネルギー庁「第6次エネルギー基本計画の概要」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/20211022_02.pdf

 

・2050年カーボンニュートラルの実現
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスをなるべく排出せず、やむなく排出した分を「除去または吸収」することで、最終的に温室効果ガスの排出量をゼロにすることです。

政府は、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする「カーボンニュートラル」を表明しています。

海外エネルギー依存からの脱却

さらに、日本固有の問題としては海外エネルギーへの依存脱却が挙げられます。資源エネルギー庁によると、2019年度における日本のエネルギー自給率は12.1%です。これは、他のOECD諸国(経済協力開発機構)に比べ低い水準にあります。

日本のエネルギー自給率が低い理由には、日本国内に現在活用できるエネルギー資源が少ないことがあります。そして、石油・石炭・天然ガスといった化石燃料を海外に依存することで、以下のような懸念が生じます。

・国際情勢によってはエネルギー資源を安定的に確保できなくなる
・エネルギー資源を確保できない場合、国民の生活や企業活動に支障が生じ、人命に関わる可能性もある。

このように、私たちを取り巻く環境の動きがあり、それに呼応する形で省エネが推進されているのが現状です。そしてまた、オフィスビルに省エネ対策を施すと使用エネルギー量が減るため、運営管理のコストが削減されます。

コストが削減されると、最終的にはオーナーさまの収益アップにつながり、オフィスビルの健全な運営につながる可能性が出てきます。すなわち省エネは、環境問題を抱える世界とビルオーナーさま双方にとってwin-winとなる取り組みなのです。

オフィスビルのエネルギー消費の割合は?

次に、オフィスビルでは「どこにどれくらいのエネルギーが使われているのか」を見ていきましょう。

以下の表は、熱源があり、延床面積に対する専有部の割合であるレンタブル比が60%以上のオフィスビルを想定した場合のエネルギー消費の割合です。

エネルギー消費先区分 おもなエネルギー消費機器 割合
コンセント パソコンなど 21.1%
照明 照明器具 21.3%
熱源 冷凍機・冷温水機・ボイラ・冷却水ポンプなど 31.1%
熱搬送 冷温水2次ポンプ・空調機・ファンコイルユニットなど 12.0%
動力 駐車場ファン・揚水ポンプなど 8.6%
その他 トランス損失、店舗動力など 5.1%
給湯 ボイラ・循環ポンプ・電気温水器など 0.8%

出典:資源エネルギー庁「平成24年度エネルギーに関する年次報告」
https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2013html/2-1-2.html

 

熱源と熱搬送はどちらも空調に関する部分であることから、オフィスビルは、照明と空調でエネルギー消費量の約6割強を占めていることがわかります。

オフィスビルを省エネする3つのメリット

ここからは、オフィスビルを省エネする3つのメリットについて見ていきましょう。

コストが削減される

先述した通り、オフィスビルに省エネ対策を施すと、継続的なコストの削減につながります。コストの削減で得た利益は、オフィスビルの設備投資の資金にまわすことも可能です。

設備投資にはお金が必要ですが、補助金や助成金を利用できる場合は、オーナーさまの費用負担を軽減できます。

CO2が削減され資産価値が向上する

環境問題への取り組みは、CO2削減によるSDGs/ESG視点での付加価値向上や、オフィスビルの資産価値向上につながります。

例えば、オーナーさまのオフィスビルがテナントビルの場合、省エネ対策を施しながら、安全かつ快適な空間をテナントに提供できます。今後は建物の省エネ性能の明示が求められるようになっていく動きもあるため、テナント募集時に直接的な影響が生じる可能性もあります。

設備の安定稼働が期待できる

オフィスビルの省エネ対策には、設備の清掃や部品交換などのメンテナンスも含まれます。設備の定期的なメンテナンスは、劣化や故障の防止につながるため、副次的効果として設備の安定稼働が期待できるでしょう。

オフィスビルにおける9つの省エネ対策

オフィスビル

最後に、オフィスビルにおける9つの省エネ対策を解説します。

BEMSの導入

BEMSとは、Building and Energy Management Systemの略語で「ビル・エネルギー管理システム」のことです。

BEMSを導入すると、オフィスビルにおいて「どこでどれだけのエネルギーが使用されているか」を把握できるため、オフィスビル全体のエネルギー使用量の「見える化」が実現します。

BEMSによっては、空調や照明の自動制御により無駄な電力を削減し、必要な運転のみを稼働させることも可能です。

加えて、各設備のスケジュール運転や運転状況の監視により、オフィスビルの契約電力以上にならないように制御することも可能になるため、電気の基本料金の削減につながります。

さらにBEMSは、月・年・設備ごとのエネルギー集計も可能なため、さらなる省エネに向けた改善プランの構築にも役立ちます。オフィスビルの省エネ化にあたり、多機能かつ省エネ効果の確認も可能なBEMSは、優先すべき項目といえるでしょう。

熱源の入替

デマンドとは、30分の使用電力量の平均値を指し、1年間で最大のデマンドが契約電力となり基本料金が決定します。

デマンド管理によって、オフィスビルの電気管理に関する必要事項の計測や記録を行なうと、デマンドが大きくなった際の対処を行なうことが可能になります。

熱源の省エネには、以下のような運転方法や電力デマンドの見直しが挙げられます。

・吸収式冷凍機の容量の台数分割
・夏季や中間期の冷水温度の設定変更
・ボイラの空気比の適正化や保湿強化
・GHP(ガスヒートポンプエアコン)、EHP(電気式ヒートポンプエアコン)の冷媒配管長の短縮
・冷水2次ポンプのインバータ制御適正化

大阪ガスファシリティーズでは、中間期(5月と10月)に吸収式冷温水発生機の冷却水出口温度の設定を7度から10度に変更することで、ガス消費量を8%削減した実績もあります。

空調システムの入替

オフィスビルの空調システムは、ビル利用者への影響を最小限に抑え、快適性の向上を目指しつつ、省エネ化を図ることが重要です。空調システムに関する省エネには、おもに以下のようなものが挙げられます。

・空調機の送風量の適正化
・外気取入量CO2制御
・空調の間欠運転、起動時間の短縮
・全熱交換器採用による排熱回収
・外気冷房
・冷却水ポンプのインバータ化

冷却塔の入替

冷却塔は気化熱の原理で外の空気を利用するため、汚れやすい特徴があります。そのため、機器の劣化診断・清掃管理・部品管理や交換、水質コントロールなど、冷却能力や稼働効率が下がらないための定期的なメンテナンスや機器の入れ替えが必要です。

オフィスビルのような、営業にともなって使用する水量と汚水排出量が大きく異なる場合は、数値基準のクリアにより、地方自治体から下水道料金の減量認定を受けることができます。

下水道料金の減免制度を利用すると、ビルの運営管理のコスト削減につながります。

室内照明の入替

室内照明の省エネには、以下のような方法があります。

・LED化
・照度センサー、人感センサーの利用(共用部分)
・使用区分に合わせた照明区分回路の細分化

オフィスビルにおける照明は、ビル全体のエネルギー使用量の多くを占めます。そのため、照明機器の見直しは、CO2やコスト削減につながります。

衛生設備の見直し

オフィスビルにおける衛生設備の省エネには、トイレの節水が効果的です。というのは、一般的なオフィスビルなら、トイレ用水に使われる水の量が、共用水の多くを占めるためです。

例えば、普通形のフラッシュバルブ(ハンドルを押して水を流すタイプ)の利用では、ハンドルを1回押すごとに使用する水の量は約15リットルです。

フラッシュバルブを節水形に変更したり、トイレを自動洗浄のものに変えたりすると、今までと同様の効果を得ながら水の量を減らすことが可能になります。

受変電設備の入替

受変電設備とは、発電所で作られた高圧の電気をそのまま受け取り、オフィスビルの各所で使えるように変圧器を通して電圧を低く変換させる設備のことです。

変圧器には電流の損失を生み出す「負荷損」と「無負荷損」の2つがあり、効率の悪い変圧器を利用し続けると、年月の経過とともに電流の損失が積み上がります。

受変電設備の省エネにおいては、高効率な変圧器に入れ替えることで、電流の損失を回避し、電力コストの損失とエネルギーの浪費を抑えることができます。

昇降機の制御方法

オフィスビルでは、一般的なエレベーターや小荷物専用昇降機などを利用します。昇降機を省エネするには、まずは夜間や休日などの利用者が少ない時間帯に合わせ、運転台数の制御や一部停止を行なうことがエネルギーの削減につながるでしょう。

他にも機器更新を行い、制御方式をインバータ制御方式に変えることで、省エネルギーに加えてなめらかな乗り心地の実現も可能となります。

また、インバータ化と併せて電力回生制御を付加すれば、減速時にエレベーターが発電し、他の設備でその電気を利用することが可能となるため、さらなる省エネが期待できるでしょう。

駐車場の換気方法見直し

屋内駐車場には、空気を衛生的に保つため、給気ファンや排気ファンなどの換気ファンが取り付けられています。

一定風量で作動している換気ファンを、一酸化炭素濃度値によって必要な分のみの換気を行なうようにすると、風量の調節が可能となり、CO2の削減および電気の省エネにつながります。

これらの改善を行なうためには、CO濃度センサー・車両センサー・インバーター盤・制御盤などを導入することで可能となります。

また、駐車場の省エネでも照明への対策は有効です。駐車場に設置されている水銀灯や蛍光灯をLEDに変えると、照明の寿命が延びる、電気代の節約になるなどの効果を得られます。さらに人感センサーを設置すれば、より効率的な省エネが可能です。
また、電気のスイッチを増やすことで必要な場所のみを点灯させるなどの照明の細分化も有効的です。ただし、防犯面での配慮は必要なため、専門的な知識・経験を有する会社への相談が望ましいでしょう。

まとめ

オフィスビルの省エネでは、「どこにどれくらいのエネルギーが使用されているか」を可視化させることが大切です。

そして、可視化されたエネルギー使用量の情報をもとに、オフィスビルの快適な空間を保ちつつ、無駄なエネルギーを削減したり、運営管理にかかるコストを削減させたりすることが重要です。

大阪ガスファシリティーズでは、エネルギー管理士などの専門スタッフが、BEMS導入・省エネルギー法対応サービス・エネルギー計測・施設に合わせたソリューションの提案など、お客さまのニーズに合わせた省エネルギーソリューションをトータルでご提案します。

「エネルギーコストを下げたい」「省エネの専門家がいない」など、オフィスビルの省エネにお悩みのオーナーさまは、大阪ガスファシリティーズへお気軽にご相談ください。

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