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エコチューニングとは?メリットと366種類の対策項目

エコチューニングとは?メリットと366種類の対策項目

「エコチューニングという言葉を見聞きしたけれど、詳しい内容はわからない」というビルオーナーさまも多いのではないでしょうか。

 

エコチューニングとは環境省が推進する、設備投資なしで機器やシステムを運用改善し、省エネルギー化を進める脱炭素事業です。

 

今回は、エコチューニングの概要や注目される理由、実施プロセスについて解説します。また、導入のメリットや具体的な事例も紹介するため、ぜひ参考にしてください。

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エコチューニングとは

エコチューニングとは、環境省が推進する脱炭素事業の一つで、脱炭素社会の実現に向けて建物のエネルギー分野で貢献することを目的としています。

エコチューニングの取り組みで目指しているのは、オフィスや病院や学校など、業務用等の建築物から排出される温室効果ガスの削減です。建物の快適性や生産性を維持しながら、設備機器やシステムの運用改善を行うことに焦点を当てています。

具体的には、空調や照明をはじめとしたさまざまな設備機器やシステムの適切な運用を通じて、建物の快適性や生産性を確保しつつ、温室効果ガスの排出削減を図ります。

なお、「エコチューニング」は環境省の登録商標です。

エコチューニングが注目される背景

エコチューニングは、環境問題やエネルギー効率の課題に対処する手段として関心を集めています。

ここでは、エコチューニングが注目されるおもな背景を紹介します。

東日本大震災を背景とした第6次エネルギー基本計画

2021年に閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」は、東日本大震災から10年の節目に策定されました。

計画では、エネルギーの安全性を最優先にしたうえで安定供給と経済的効率性の向上を目指し、低コストでの供給を実現すること、また環境適合を図ることを重視しています。

(出典:経済産業省「第6次エネルギー基本計画が閣議決定されました」

おもな取り組みは、省エネルギー化による消費効率の改善や、再生可能エネルギーの最大限の活用、脱炭素化された電源・熱源へのエネルギー転換の推進です。

計画の実現にはエコチューニングが重要な役割を担い、エネルギー効率の向上や環境負荷の軽減を実行する手法として注目されています。

気候変動問題

気候変動は、国際社会の重要な課題の一つです。気温の上昇や干ばつの増加、食糧不足など、さまざまな影響が懸念されています。

気候変動問題に対応するため、2015年にはパリ協定が結ばれ、各国は温室効果ガス削減の目標を設定しました。日本は2030年度に2013年度比で温室効果ガスを46%削減し、さらに削減率50%を目指す方針です。

エコチューニングは閣議決定された「地球温暖化対策計画」のなかで重要な施策として位置づけられており、「徹底的なエネルギー管理の実施」として明記されています。

(出典:環境省「地球温暖化対策計画(令和3年10月22日閣議決定)」

世界的なエネルギー価格の高騰

ロシアによるウクライナ侵略により世界のエネルギー供給が不安定になり、輸入依存度の高い日本でもエネルギー価格が高騰しました。

2022年12月には、日本での電気料金が家庭用で前年比30%、産業用で60%上昇し、ガス料金も家庭用で40%、産業用で2倍に上がりました。

(出典:経済産業省 資源エネルギー庁「令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)」

この高騰はエネルギーの安定供給や効率的な利用の重要性を再確認させ、脱炭素社会への移行を加速させています。

エコチューニングによる効率的なエネルギー管理は、エネルギー消費と温室効果ガスの排出を削減し、環境配慮と経済的安定の両面で利益をもたらします。

企業のSDGsに対する取り組みの高まり

近年、企業活動においてはSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みや、環境経営は当たり前のものとなっています。

エコチューニングは、SDGsにも貢献する取り組みです。具体的には、SDGsにある17の目標のうち、「7 エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」「13 気候変動に具体的な対策を」に貢献します。

また、ビルオーナーさまの視点では「12 つくる責任、つかう責任」の目標や、持続可能な都市開発を目指す目標「11 住み続けられるまちづくりを」にもつながります。

企業がエコチューニングを取り入れることで、「積極的にSDGsに取り組んでいる」「地球環境や社会に配慮している」というメッセージを発信することが可能です。

エコチューニングの特徴やメリット・課題

エコチューニングの特徴やメリット・課題

エコチューニングの特徴やメリット、課題について解説します。

設備運転の運用改善

エコチューニングは設備管理における運用改善を徹底し、無駄な運転を省くことで、建物の快適性や生産性を確保しつつ、省エネルギー化による光熱水費の削減を実現し、ひいては温室効果ガスの排出削減にも貢献します。

具体的には、節電やエアコンの設定調整といった目に見える省エネルギー化と、フィルターの清掃に代表される設備の維持管理といった目に見えない省エネルギー化が含まれます。

総務担当者やその場に勤めるみんなが行なう「見える省エネ」と、設備やファシリティの専門家が行なう「見えない省エネ」で、日々のエネルギー消費を抑えて運用コストを低減することが可能です。

イニシャルコストが不要

エコチューニングのメリットの一つは、新たな設備更新などの初期投資(イニシャルコスト)なしに省エネルギー化を図ることができる点です。

建物にある既存の設備機器の運用改善を行なうことで、光熱水費の削減を実現でき、経済的負担を最小限に抑えながら効率的な運用が行なえます。

なお、お客さまからエコチューニング事業者への対価は、建物の規模やお客さまのご都合に合わせて、削減した光熱水費の一定額・一定割合を支払う方法(成果報酬型)や、固定の業務委託費を支払う方法(固定報酬型)によってまかなわれます。

削減額には限界もある

一方で、エコチューニングには課題も存在します。

既存の設備を活用するため、エネルギー削減には限界があります。特に、設備がすでに効率的に運用されている場合、さらなる大幅な削減は期待しにくいかもしれません。

実現可能な節約額を事前に評価しておくことが大切です。

エコチューニングで取り組む366種類の対策項目

エコチューニングは、環境省が定める366の対策項目を通じて実践されます。対策項目は以下のとおりです。

設備 機器 対策数
熱源設備 ボイラ・燃焼機器 12項目
熱交換器 8項目
冷凍機 23項目
冷温水発生機 22項目
冷却塔 11項目
冷却水ポンプ 5項目
冷水・温水ポンプ 7項目
ポンプ全般 7項目
蓄熱槽 6項目
熱源システム 5項目
空調設備 空調システム 43項目
空調機 14項目
外調機 11項目
ファンコイル 7項目
給気・排気ファン 22項目
ビルマルチ 8項目
水熱源ヒートポンプ 5項目
空冷パッケージ 7項目
水冷パッケージ 9項目
電気設備 電気設備全般 10項目
照明設備 照明設備全般 32項目
給排水衛生設備 給水設備 5項目
排水設備 6項目
湯沸室 4項目
男女トイレ 6項目
給湯ボイラ 12項目
熱交換器 6項目
貯湯槽 7項目
給湯全般 9項目
建築設備・その他項目 エレベータ 7項目
エスカレータ 6項目
その他項目 24項目

(出典:環境省「エコチューニングによる建築物の維持管理への貢献 建築物維持管理におけるエコチューニングの役割」

上記の対策を通じて、設備機器の運用を改善し、エネルギー使用量の削減を目指します。エコチューニング技術者や専門家によるエネルギー診断を受けることで、これらの対策の具体的な活用が可能です。

例えば、空調設備を例にとると、室内設定温度の見直しや運転時間の短縮、機器の起動・停止時間の最適化などがあります。

照明設備においては、過剰な照明の間引きの徹底や不要な部分の消灯、LED照明の採用などにより消費エネルギーを減らします。また、給排水衛生設備では、保温便座の通電方法や時間、期間を最適化することなどが対策の代表例です。

エコチューニング実施の流れ

エコチューニング実施の流れ

実際にエコチューニングを導入した施設の具体例と、エコチューニングの実施プロセスを紹介します。

エコチューニングの具体例

エコチューニング推進センターが公表している事例によると、延べ床面積約3万㎡のある病院ではエコチューニングを導入し、設備投資なしで光熱水費を約820万円削減することに成功しました。

実施したプロセスは以下のとおりです。

  1. 病院内の設備機器の運用改善を診断・分析
  2. 外調機の運転時間の見直し方針を決定
  3. 外調機の運転スケジュールを変更し、運転時間を削減
  4. 1日当たりの電力削減量が2,214kWhとなり、5ヵ月間で約650万円の削減を実現
  5. ほかの対策も実施し、合計で約820万円の削減に成功

また、この事例で実施されたエコチューニングの対策項目と削減コストを以下に紹介します。

対策項目 削減コスト
冷房時の冷温水発生機の冷水温度設定を変更 18万5,000円
冷房時の冷却水ポンプのインバータ設定を変更 52万2,000円
暖房時の外調機および加湿器の運転時間の削減 648万1,000円
冬期の冷温水発生機の温水温度設定の変更 102万5,000円
合計 821万3,000円

(出典:エコチューニング推進センター「エコチューニング事例と成果」

エコチューニングの実施プロセス

エコチューニングのプロセスは、Plan・Do・Check・ActionのPDCAサイクルを用いて行なわれます。

Plan 建物の概要やエネルギー消費の現状を把握し、改善策を検討します。366のエコチューニング対策から最適な手法を選びます。
Do 選定した改善策を段階的に実施し、効果を確認しながら持続的に実践します。
Check & Action 実施した改善策の効果を評価し、得られたデータをもとに計画の見直しやさらなる改善点を洗い出し、次のPDCAサイクルへと進めます。

(出典:環境省「エコチューニングによる建築物の維持管理への貢献 建築物維持管理におけるエコチューニングの役割」

「エコチューニング」に関するご相談は大阪ガスファシリティーズへ

エコチューニングは、温室効果ガスの削減を目的とした環境省が推進する脱炭素事業です。366の対策項目とPDCAサイクルを用いた実施プロセスを通じて、環境配慮と経済的安定の両面で利益をもたらします。

大阪ガスファシリティーズは、環境省が定めたガイドラインに基づくエコチューニングの認定事業者です。

また、エネマネ事業者やZEBプランナーとしても活動しており、さまざまなエネルギー解決手法を有しています。確かな管理ノウハウと豊富なネットワークで、お客さまに最適なソリューションを提案いたします。

エネルギー効率の改善や省エネルギー化に興味のある方は、大阪ガスファシリティーズにご相談ください。

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