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4段階のZEBシリーズのひとつ「ZEB Ready」とは?ZEBのなかで実現ハードルが低い?

4段階のZEBシリーズのひとつ「ZEB Ready」とは?ZEBのなかで実現ハードルが低い?

ビルのZEB化を考えるオーナーさまのなかには、「ZEB Readyとはなにか?」「メリットや改修手順は?」とお悩みの方もいるかもしれません。

 

ZEB Readyは、ZEBシリーズのなかでも実現ハードルが低く、ZEBの認証取得により、対外的にオーナーさまのビルがZEBの建築物であることをアピールできます。

 

この記事では、ZEB Readyの定義・メリット・補助金制度・既存ビルの改修手順を解説します。

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「ZEB Ready」とは?

省エネ対策が求められる背景

まずは、「ZEB Ready」の基礎知識や、4つのZEBの認証基準について解説します

「ZEB」には4つの種類がある

ZEBは、Net Zero Energy Building(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の略語であり、「快適な室内環境を実現しながら、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指した建物」です。

ZEBは、再生可能エネルギーの導入や、一次エネルギー消費量の削減などの基準により、『ZEB』・Nearly ZEB・ZEB Ready・ZEB Orientedの4つに分類されます。

その中で「ZEB Ready」は「『ZEB』を見据えた先進建築物として、外皮の高断熱化および高効率な省エネルギー設備を備えた建築物」と定義されています。

「ZEB Ready」の認証基準

ZEB Readyの認証基準は、「省エネで基準一次エネルギー消費量から50%以上の一次エネルギー消費量の削減を実現している建物」とされています。

「一次エネルギー」とは、水力・太陽光・原子力燃料・化石燃料など、自然から得られるエネルギーを指し、住宅やビルなどで消費する一次エネルギーを熱量換算したものを「一次エネルギー消費量」といいます。

したがって、ZEB Readyの認証を得るための「基準一次エネルギー消費量」とは、設備毎、地域毎、室用途毎により定められる基準となる標準的な一次エネルギー消費量のことです。

残り3つの分類も合わせてZEBの認証基準をまとめると下表の通りです。

一次エネルギー消費量削減率 詳しい認証基準
『ZEB』 100%以上 ・基準一次エネルギー消費量の50%以上の削減
・創エネにより基準一次エネルギー消費量を100%以上削減
Nearly ZEB 75%以上 ・基準一次エネルギー消費量の50%以上の削減
・創エネにより基準一次エネルギー消費量を75%以上削減
ZEB Ready 50%以上 ・基準一次エネルギー消費量の50%以上の削減
ZEB Oriented 30%以上(病院・ホテル・飲食店など)
40%以上(学校・オフィス・工場など)
・延べ床面積1万平方メートル以上
・基準一次エネルギー消費量の30%以上または40%以上の削減
・未評価技術(WEBPROにおいて現時点で評価されていない技術)の導入

 

ZEB Readyの一次エネルギー消費量削減率は、4つのZEBシリーズのなかで3番目に位置します。

「ビルのZEB Ready化で、一次エネルギー消費量の50%削減は難しい」と感じるオーナーさまもいるかもしれませんが、築年数が古い建築物ほど、実現の可能性は高くなると考えられるでしょう。

「ZEB Ready」4つのメリット

「ZEB Ready」4つのメリット

ここからは、「ZEB Ready」の4つのメリットについて解説します。

ZEB認証のアピールができる

ZEB Readyは、ZEBシリーズのなかでも『ZEB』ほどの実現ハードルの高さはないものの、ZEBの認証を受けた建築物として対外的なアピールが可能です。

ZEB認証を得ると、光熱費などの削減といったメリットの他、建築物のイメージ向上・不動産価値の向上・SDGsへの貢献も可能になります。

電力消費に重点を置く省エネでも認証を得られる可能性がある

ZEB Readyの認証基準には、創エネによるエネルギー消費量の削減基準は設けられていません。一般的なオフィスビルの場合、ピーク時間帯には空調関係で全体の電力消費の約半分を占めます。ここに照明を加えると、およそ6割から7割となります。

そのため、建築物の断熱化に手を付けずとも、一次エネルギー消費割合が高い空調機・換気機器・照明機器などの改善に焦点を当てることで、ZEB Readyの基準を達成できる可能性があるのです。

「ZEB Oriented」よりも条件が少ないため実現しやすい

ZEB Oriented は、ZEB Readyよりも、基準一次エネルギー消費量の基準が低く設定されています。一見、ZEB OrientedのほうがZEB認証の実現ハードルは低く思えますが、基準一次エネルギー消費量以外にも、以下のような条件が設けられています。

・延べ床面積が1万平方メートル以上ある建築物であること
・未評価技術を導入していること

一次エネルギー消費量の削減率の算出には、「WEBPRO」という計算ツールを使用します。

未評価技術とは、WEBPROで算出されない工事手法を指し、公益社団法人空気調和・衛生工学会が、省エネルギー効果が高いと判断するものが対象です。

令和4年度におけるWEBPRO未評価技術には、以下の15項目が定められています。

未評価技術15項目
・CO2濃度による外気量制御
・自然換気システム
・空調ポンプ制御の高度化
・空調ファン制御の高度化
・冷却塔ファン・インバータ制御
・照明のゾーニング制御
・フリークーリング
・デシカント空調システム
・クール・ヒートトレンチシステム
・ハイブリッド給湯システム等
・地中熱利用の高度化
・コージェネレーション設備の高度化
・自然採光システム
・超高効率変圧器
・熱回収ヒートポンプ

出典:SII制作パンフレット「令和4年度経済産業省によるZEB認証事業について」
https://sii.or.jp/zeb04/uploads/R4_ZEB_pamphlet_A4.pdf

 

建築物のZEB Oriented化において未評価技術を導入する際、上記15項目のうち1項目以上を導入しなければなりません。未評価技術は、適宜見直されることを前提としており、2023年1月にも一部見直しの報道が出ています。そのため、ZEB Orientedを検討される際は事前確認をおすすめします。

既存ビルでも基準達成は可能です

ZEB Readyは、『ZEB』やNearly ZEBよりも、導入費用や初期費用を抑えつつZEB化できる可能性があります。

というのは、既存ビルのZEB Ready化では、すでにある汎用的な技術の活用により、ZEB Readyの基準をクリアするケースも多く見られるためです。

ビルのオーナーさまとテナントの協動により、執務環境の改善や省エネによる環境負荷の低減などの覚書、契約などを結び実践することを「グリーンリース」といいます。

グリーンリースの活用では、光熱費などの維持管理コストの削減や、執務環境が改善されることで、オーナーさまとテナントの双方がメリットを得られます。

オーナーさまのビルにテナントが入っている場合、グリーンリースの導入で、ビルのZEB Ready化がスムーズに進む可能性が高まるでしょう。

「ZEB Ready」を対象とする補助金制度

次に、令和5年2月現在における「ZEB Ready」を対象とする補助金制度を解説します。

【環境省】既存建築物のZEB化支援事業

環境省の「既存建築物のZEB化支援事業」は、既存の公共施設や民間建築物を対象とし、以下の2つの実証事業があります。

・レジリエンス強化型ZEB実証事業

災害発生時に活動拠点となる公共性の高い業務用施設(学校・集会所・庁舎など)および自然公園内の業務用施設(宿舎など)の業務用施設で、蓄電池や再生可能エネルギー設備を導入する際に補助金の申請が可能です。

停電の際、導入設備によるエネルギー供給が可能であり、換気機能などの感染対策も備えた強化型ZEBが対象になります。

※令和5年2月現在
実施期間 令和2年度~令和5年度
対象者 地方公共団体(延べ床面積制限なし)
民間団体(延べ床面積2,000平方メートル未満)
対象設備等 ZEB実現に寄与する設備(換気・給湯・空調・BEMS装置など)
補助概要 ZEB Readyは補助対象経費の2/3
補助金上限5億円・延べ床面積2,000平方メートル未満は3億円

 

・ZEB実現に向けた先進的省エネルギー建築物実証事業

地方公共団体所有施設および中小規模の民間業務用ビルなどに対し、ZEBの実現に資する省エネ・省CO2性の高いシステム・設備機器などの導入を支援するものです。

実施期間 平成31年度~令和5年度
対象者 地方公共団体(延べ床面積制限なし)
民間団体(延べ床面積2,000平方メートル未満)
対象設備等 ZEB実現に寄与する設備(換気・給湯・空調・BEMS装置など)
補助概要 ZEB Readyは補助対象経費の2/3
(延べ床面積2,000平方メートル未満のZEB Readyは対象外)
補助金上限5億円・延べ床面積2,000平方メートル未満は3億円
※令和5年2月現在

既存ビルを「ZEB Ready」に改修するための手順は?

最後に、既存ビルをZEB Ready化するための手順を解説します。

1.専門業者の選択

既存ビルのZEB Readyへの改修は、「ZEBプランナー」へ依頼しましょう。

ZEBプランナーとは、「ZEB設計ガイドライン」またはその業者の経験や設計知見を活かしつつ、ZEB実現へ向けた相談窓口の設置、業務支援を行なう業者を指し、一般社団法人環境共生イニシアチブ(SII)が定めているものです。

ZEBプランナーには、コンサルティング会社・設計会社・設計施工会社などが登録されています。ZEBの認証取得では、ZEBプランナーへの依頼は必須ではありません。

しかし、ZEBに関する補助申請をする場合はZEBプランナーの関与が必要です。ZEBプランナーの選択では、建築物のZEB化の実績が豊富にあることも重要になるでしょう。

2.ZEB Ready化への可能性の検討

既存ビルでは、ZEB Ready化が難しいケースがあるため、「ZEB Readyに改修できるかどうか」の事前検討が必要です。

ZEB Ready化への可能性の調査は、基本設計レベルが望ましいとされています。建築物のZEB Ready化実現の可能性がある場合は、検討結果をもとに、設計仕様書や詳細設計を作成します。

3.ZEB Ready認証手続き

ZEB Readyの認証を受けるためには、建築物省エネ法第7条などに基づく第三者認証制度を活用します。第三者認証制度には、BELS・eマーク・CASBEE(キャスビー)などがあります。

4.ZEB Ready補助事業申請

補助事業を活用する場合は、補助申請が必要です。補助申請は、申請時期が設定されているため、前もって確認しておくことが重要です。

補助金は必ず受けられるとは限りません。国の予算範囲内で提案が望ましいとされる順に採択されることを覚えておきましょう。

エネルギー消費性能計算プログラムを使用し、基準建築物と比較した際の設計建築物の一次エネルギー消費量の比率を「BEI(Building Energy Index)」といいますが、ZEBの補助申請では、BELSの取得後、設計変更をし、竣工時にBEIが上がった場合は補助金返還の可能性があるため注意してください。

5.施行・竣工調査

補助事業を活用する場合、年度単位で工事を完了させなければなりません。ただし、ある程度以上の規模がある建築物は、複数年度にわたる工事が認められる場合があります。竣工後は、補助事業の執行団体による検査が行なわれます。

6.補助事業の実績報告書提出

最後に、補助事業の実績報告書を作成し、執行団体に提出します。

ZEBのご相談は大阪ガスファシリティーズへ

建築物のZEB Ready化では、『ZEB』やNearly ZEBよりも、導入費用や初期費用を抑えつつ、対外的にZEB認証取得のアピールをできる可能性が見込めます。

ZEB Readyは、創エネが基準に含まれず、電力消費の改善でも認証を得られる場合があるため、基準達成に向けた負担は意外と高くない可能性があります。

大阪ガスファシリティーズは、ZEBプランナーの資格を保有しており、エコチューニング・エネルギーマネジメント・エネルギー見える化システム構築など、多くの省エネコンサルティング事業の実績があります。

ビルのZEB化をお考えのオーナーさまは、大阪ガスファシリティーズにお気軽にご相談ください。

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